首が長く、なで肩の女性に多く発症するといわれている【胸郭出口症候群】は手指や腕のしびれ、熱感・冷感、脱力感で始まります。
徐々に首や肩、肩甲部のうずくような痛みが現れます。
症状は、電車のつり革につかまる時のように肩をあげて後ろに反らす運動や、首を反対側に傾けてさらに後ろへ反らす運動をする時に強くなります。
神経や血管の通り道か狭くなる
肩こりに加えて、腕の冷えや脱力感、ひじの内側の痛み、わきの下の引きつるような痛みなどを伴う場合は、「胸郭出口症候群」という病気と見てほぼ間違いないでしょう。
私たちの心臓や肺を守っている鎖骨や肋骨などの骨組みを、胸郭といいます。
鎖骨と第1肋骨(左右12本ずつある肋骨の一番上)の間にあるすき間を胸郭出口と呼びます。
胸郭出口は肩に近いところにあって、ここを多くの神経や血管が通っています。
例えば、頚椎(首の骨)の中を通る脊髄(背骨の中にある神経器官)から枝分かれし、腕や手につながる神経(腕神経叢)は、胸郭から離れて狭い胸郭出口から腕に向かって出て行きます。
心臓と腕を結ぶ血管も、腕神経叢と交差するような格好で胸郭出口を通っています。
この胸郭出口のところで、血管や腕神経叢が骨や筋肉によって圧迫されると、肩こりや首の痛みをはじめ、腕のシビレや手指の感覚マヒなどが引き起こされます。
また、腕神経叢は、周囲の自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)とつながっています。
そのため、腕神経叢が圧迫されると自律神経が影響を受けて、頭痛、吐きけ、顔面のシビレ、目のかすみといった症状が現れることもあります。
原因は何か
胸郭出口症候群は、なで肩で筋肉があまり発達していない、20~30代の女性に多く発症します。
なで肩で線の細い体型の若い女性は、もともと胸郭出口が狭くできています。
そのうえ、肩のまわりにある筋肉の力が弱いため、腕の重さによって腕神経叢が胸郭出口で引っ張られ、症状が出やすいのです。
こうした体型の人が、長時間パソコンを操作したり、いきなり重いものを持ったりすると、胸郭出口が一段と狭くなってしまうため、血管や腕神経叢がより強く圧迫され、肩こりをはじめとする症状が現れるというわけです。
胸郭出口症候群に気づいたら
胸郭出口症候群になりやすい体型の人は、鎖骨の上にあるくぼみを自分の指で強めに押してみましょう。
あるいは誰かに頼んで、痛みや冷えやシビレがあるほうの腕を、下に向けてグツと強く引っ張ってもらってください。
そして、圧痛(押したことで発生する痛み)を感じたり、腕を引っ張られてシビレや痛みが強まったりしたなら、胸郭出口症候群の疑いが濃厚です。
該当した人は、整形外科を受診することをおすすめします。
家庭では1日5~6回、意識して怒り肩の姿勢を取るといいでしょう。
背すじを伸ばし、両肩を上げて前にすぼめるようにすると、鎖骨の上にくぼみができて、腕神経叢の圧迫がゆるみます。
毎日続ければ肩まわりの筋肉も強化され、肩こりや腕のつらい症状の改善が期待できます。