五十肩は、「手が反対側の肩につくか」「手を腰に当てられるか」など肩こりと見分けにくいのが現状です。
まずは、五十肩とそのほかの病気を見分ける方法について、特に、五十肩と一般的な肩こりの違いについて述べていきます。
というのも、重い肩こりでも肩に強い痛みが出るので、五十肩の患者さんの中には、自分の病状が重い肩こりと思い込んでいる人も少なくないからです。
五十肩と肩こりの違い!ジッとしていれば痛まないのが五十肩
五十肩と肩こりは本来、全く別の病気です。
肩こりの主原因は、疲労による肩の筋肉のこわばり。
ジッとしていても、肩がこったり、痛みを感じたりしますが、肩や腕を動かしても痛みが出るとは限りません。
これに対して五十肩は、肩関節のまわりで起きている炎症。
肩や腕を動かすと強い痛みを感じますが、ジッとしていれば、痛みは生じません。
それに、肩こりは、両肩に起こることもありますが、五十肩は、たいていはどちらか一方の肩に起こります。
五十肩になるとうまくできない動作とは
自分が五十肩であることがわからないと、正しい対処ができず、症状が悪化したり、治りが遅れたりすることもあります。
そこで、まず次の方法で、肩の痛みが五十肩かそうでないかを、調べてみてください。
①頭の後ろに両手を当てる。
②背中側の腰の部分に両手を当てる。
③片手を反対側の肩につける。
④「前にならえ」の姿勢を取り、その姿勢から両腕を横に開いたり閉じたりする。
五十肩でなければ、これらの動作は、すべてできます。
五十肩になると、肩を動かせる範囲が限られてきます。
これらの動作がうまくできないようであれば、五十肩を疑ってみたほうがいいでしょう。
反対に、肩が痛くてもこれらの動作ができるのであれば、五十肩ではありません。
肩の痛みの原因は、別にあると考えたほうがいいでしょう。
五十肩はふつう、数ヵ月~1年で、自然に治るのも特徴。
ただし、中には、ほうっておくと症状が治まらないものもあります。
その代表が腱板断裂や石灰沈着性腱板炎です。
これらの病気は、きちんとした治療を受ける必要があるので、痛みを我慢せずに、医師の診断を受けるようにしましょう。
五十肩の治し方!入浴中は肩がらくに動かせる「指の尺取り虫運動」
五十肩の解消のためには、「指の尺取り虫運動」が大変有効です。
指の尺取り虫運動は、痛むほうの手の指を壁につき、人さし指と中指を壁にはわせるように、少しずつ腕を上げていく運動。
指を壁にはわせるような動きが、尺取り虫の動きに似ているため、この特集では、「指の尺取り虫運動」と呼ぶことにします。
では、指の尺取り虫運動のやり方を、簡単に説明しましょう
①壁に顔を向ける。痛むほうの腕を軽く伸ばして肩の高さまで上げ、人さし指と中指の先を壁につける。
②指の先を壁にはわせるよう に、人さし指と中指を交互 に動かしながら、ゆっくり と腕を上げていく(体は壁に少しずつ近づけていく)
③痛くて上げられないところまでいったら、今度は、同様に人さし指と中指を交互に動かしながら、腕を下ろしていく。
腕を伸ばして指先を肩の高さで壁につけ、少しずつしゃがみこんでいく方法もあります(指の尺取り虫運動では、肩の高さまで腕が上がらない人の場合、腕を最も上げられる高さから始めればいい)。
指の尺取り虫運動は、1日10回以上を目安に行いましょう。
ただし、肩の痛みが激しいときは無理をせず、休んでもかまいません。
1日10回が難しければ、2~3回から始めてみましょう。
指先が最も上がった位置に印をつけておけば、成果を実感でき、運動を続ける励みになります。
指の尺取り虫運動は、いつ行ってもかまいませんが、入浴中が最もおすすめです。
肩が温まっているときのほうが、肩の深部筋や肩関節の周辺組織の血行がよくなっているため、肩をらくに動かせるのです。
湯冷めをしないように注意しながら、浴室の壁を利用して行うといいでしょう。
指の尺取り虫運動を毎日続ければ、2週間くらいで効果の現れることが多いようです。
肩の痛みが軽減したら、今度は壁に対して横向きに立って、尺取り虫運動を行ってもいいでしょう。
肩を動かせる範囲が広がり、効果が大きくなります。
肩に負担がかからない自由の女神のポーズ
尺取り虫運動とともにもう一つ、重い五十肩の解消に有効な運動を紹介しましょう。
それが「タオル体操」。
両手でタオルを握り、ひじを伸ばしたまま、体の前側から上げていったり、タオルを体の後ろ側で握り、ひじを曲げて引き上げたりします。
五十肩の症状が軽い場合は、「手提げ袋体操」も試してみてください。
そのほか、挙手をするときのように片手を上げて、「自由の女神のポーズ」を取ることも、症状の軽い五十肩を解消するのに役立ちます。
この姿勢は、肩関節に最も負担がかからない状態で、「ゼロポジション」とも呼ばれています。
注意したいのは、体の横側からではなく、体の前側から手を上げていくことです。
五十肩の予防のために、これらの運動を、痛むほうの手だけでなく、痛みのないほうの手で行ってもいいでしょう。
あなたも、ここで紹介した運動を、五十肩の予防・改善のために、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。