膵臓ガンが見つかった時点で、ガンがまだ小さく、周囲に広がっておらず、また転移も起こしていないのなら、完治を目標にして手術を行います。
この手術を行える膵臓ガン患者は100人中40人ぐらいでしょう。
ところが、せっかく完治目標の手術を行っても、ほとんどの人は2~3年以内に死んでしまいます。
結局、その後、長年にわたって生き延びられるのは手術をした40人のうち6~7人だけなのです。
膵頭部のガンで、黄疸や十二指腸の閉塞、出血などの症状を引き起こしているときには、完治は無理だけれども、症状などを抑えるための一時逃れの手術を行います。
この手術を姑息手術といいます。
昭和天皇はこの手術の一種である腸と腸のバイパス手術を行われたのです。
膵臓ガン患者の100人中30人ぐらいがこの手術を受けていますが、完治できるわけではありません。
ほとんどが1年以内に死亡しています。
膵体部や膵尾部のガンは、見つかった時点で、すでにお腹のなか全体にガン細胞が散らばっていることが多く、もはや手術など手をつけることもできません。
有効な治療方法に乏しく、痛みや苦しみをとる治療を行うのが精一杯になります。
膵臓ガンを早期に発見するのは困難です
超音波検査やCT検査などの画像診断の能力が向上しているにもかかわらず、直径2センチ以下の大きさの膵臓ガンが発見できる確率は10パーセント以下にすぎません。
見つかったときはほとんどが4~5センチ以上の大きさです。
しかし、完治を目標とする手術ができる程度の早期状態で発見したいのなら、超音波検査またはCT検査を定期的に行わざるをえないでしょう。
なおかつ腫瘍マーカーの定期採血を実施すれば、ある程度の早期発見の対策になります。
膵臓ガンの80パーセント以上で何らかの腫瘍マーカーが陽性になりますので、少しでも早く発見される確率は高まるでしょう。
また、逆に膵臓ガン関連の腫瘍マーカーがすべて陰性なら、膵臓ガンが芽生えている可能性はかなり低いと考えてください。
膵臓ガン末期の様子
膵臓に芽生えたガンはあちらこちらに転移しますが、結局はお腹のなか全体に広がります。
そうすると、腹水がたまってお腹が張ってきます。
この状態がガン性腹膜炎です。
利尿剤を投与したり、お腹に針を刺して腹水を抜く治療を行うしかありません。
しかし、この状態になれば、あと1~2ヵ月ぐらいで死亡するでしょう。
膵臓ガンは末期になると、強い痛みとの闘いになります。
痛みに対して、最初は通常の鎮痛剤を投与することが多いのですが、だんだんと効きにくくなり、そのうち麻薬系の鎮痛剤が必要になってきます。
亡くなる直前まで、できるかぎり痛みが出ないように気をつかうのが、担当医の重要なつとめです。
膵臓ガンで治療を続けているとき、突然、どうしようもない腹痛や背部痛が起こることがあります。
急性腸炎というのを起こしたときです。
この急性腸炎について少し説明しましょう。
膵臓はもともと、食べた肉などを消化する酵素=消化酵素を十二指腸内に放出するのが主な役割です。
急性腸炎という病態下では、この消化酵素が膵臓からお腹のなかに漏れ出して、周囲の臓器や組織を消化してしまいます。
想像するだけでも恐ろしい病状です。
当然、強烈な痛みをともないます。
膵臓ガンに急性膵炎が合併した場合は、1~2日以内に死んでしまいます。