肺ガン死する人が急上昇中であり、1998年には胃がんを抜いてがん死亡の第1位になりました。
2008年人口動態統計(厚生労働省)によれば、「気管、気管支及び肺の悪性新生物」の死亡者数は年間6万7000人(男性4万9000人、女性1万8000人)でした。
増加傾向は今後も続き、2028年には肺がん死亡は年間13万人に達すると推測されています。
肺ガンの原因は何か
肺がんの原因の第一はたばこです。
たばこの煙のなかには、4000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち約200種類は有害物質で、40種類以上は発がん促進物質であるということが知られています。
これらの発がん物質が複合的にはたらいて肺がんをつくります。
世界肺癌会議が2000年に東京で開催され、たばこの害に関する警鐘「禁煙」東京宣言が採択されました。
たばこをたくさん吸うほど肺がんになりやすいこと、たばこを吸い始める年齢が早いほど肺がんになりやすいこと、禁煙すれば肺がんのリスクが減少することなどが、これまでの研究で明らかになっています。
最新の研究で、たばこが肺がんを起こす仕組みが分子や遺伝子のレベルで解明されています。
また、同じようにたばこを吸っても、肺がんになる人とならない人がいるのはなぜかといったことが明らかになりつつあります。
これらの研究によって、たばこによる肺がん発生の予防策や肺がんになりやすい体質が解明される可能性があります。
禁煙対策が実り始めた米国、英国、オーストラリアなどでは、男性の喫煙率の低下に続いて、肺がん発生の減少が始まりました。
ということは、現在も未来も禁煙が肺がん予防の最も有効な対策であることを証明しています。
治療に取り組まざるをえない肺ガン患者の姿の悲壮さは筆舌につくしがたいものがあります。
コンドーム装着によるエイズ撲滅運動も大切ですが、タバコ禁止による肺ガン撲滅運動のほうが重要な気がします。
さまざまな政治的背景により、肺ガン撲滅運動は行わないほうがよいと判断されているのでしょう。
胸のレントゲン検査は肺がんの早期発見や生存率改善には役立っていない!
日本人のほとんどが年に1度、胸のレントゲンを撮っています。
にもかかわらず、早期発見される確率は極端に低く、全肺ガンの7パーセントぐらいにすぎません。
今年、胸のレントゲンを撮って肺ガンだとわかった人の去年のレントゲンを取り寄せて見てみると、「これだったか」と思える兆候が出ていることがあるのですが、去年の段階で気づくことはまず不可能だったという例がほとんどです。
では、1年ごとではなく、4ヵ月ごとに胸のレントゲンを撮影すれば、どうなるのでしょうか。
米国で大規模に調査されましたが、結局、4ヵ月ごとに行っても、肺ガンが発生した人のその後の生存率は、1年ごとに行った人の場合と変わらないという結論が出されました。
つまり、胸部レントゲン写真は、肺ガンの早期発見には役立だないと結諭づけることができたのです。
結核予防法に基づき、日本で行っている胸部レントゲン撮影は、肺ガン早期発見の役には立っていないということをよく認識してください。
肺ガン早期発見
肺がんに特有の症状というものがあるわけではありません。
また、肺という臓器は極めて鈍感な臓器です。
そこに早期発見が難しいわけがあります。
しかし、明らかな原因がないのに咳や痰が2週間以上続く場合や、痰に血が混じる時は、早めに医療機関を受診するべきです。
個々検診の立場からは、4~6ヵ月ごとに胸部CT撮影と腫瘍マーカー検査を行うことをおすすめします。
胸部CT写真の判定は医師まかせにするのではなく、フィルムを自分の手元に残しておき、自分の目でよく確認することが大切です。
前回と今回の写真で違っているところがないかどうかを見るだけでよいのですから、間違い探しクイズのようなものです。
また、腫瘍マーカーのCEA、SCC、シフラの3つを組み合わせれば、約50パーセントの確率で肺ガンを早期発見することができるでしょう。