日本人のほとんどは年に1度、胸のレントゲンを撮影しています。
にもかかわらず、肺ガンが早期発見されることはほとんどありません。
肺ガンの進行が早すぎることもありますが、従来の胸部レントゲンでは発見しにくいというのも大きな理由です。
肺に1~2センチほどの小さなガンが芽生えていても、肺がんの初期症状は感じられず、レントゲン写真にも写っていないことが多いですし、仮に写っているように見えても異常所見であると判定するのが困難です。
丸い塊として写れば、異常だとすぐわかるのですが、血管陰影の走行のわずかな乱れ程度の所見で、その場で異常だと判読するのは至難の業です。
後日、ある程度の大きさのガンが発見されてから、昔のレントゲン写真を取り寄せたときに、「ああ、この部分がガンの始まりだったのか」と思うことがよくあります。
しかし、その昔のレントゲンを初めて見たとき、ここに異常があると読み切るのは、まず不可能でしょう。
肺ガンを発見するための痰の検査
この検査を行うときは胸の奥深くから痰を出さなければいけません。
肺の出入り口に近いところ(肺門部)にガンがある患者100人を集めると、そのうち約20人の確率でそのガンを発見することができます。
ただし、この検査で肺野部のガンを発見できることはまずありません。
もし、あなたが「自分に芽生えた肺ガンは素早く発見してやるぞ」という気概に満ちているのでしたら、年に2~3回の割合で胸部CTを撮ることをおすすめします。
とくに最近は撮影時間が短くなったヘリカルCTが普及してきましたので、このヘリカルCTを定期的に撮影するようにしましょう。
ただし、早期に発見されても、3年以内に半分ぐらいの人は死んでしまいますので、そこそこの覚悟はもっていてください。
肺ガンは、芽生えないように努力することが大切です。
タバコと肺ガンの関係は、嫌というほど耳にしていると思いますので、ここでは記載いたしません。
タバコをたくさん吸うのは自由です。でも、不幸にして肺ガンにかかったときには、じたばたしないように腹を据えておいてください。
肺ガンの宣告の重大さ
肺ガンは恐ろしい病気です。
診察室で「肺ガンです」と言われたら、死を連想しなければなりません。
もっとも「あなたは肺ガンです」と告知されることは、まずないでしょう。
他の病名でごまかされるに違いありません。
肺ガン患者の生存率は極端に低く、10人中9人は数力月から2~3年のうちに死んでしまいます。
運よく早期に発見されても、3年後で10人中5~6人、5年後には10人中3~4人しか生き残っていません。
日本では4万人ぐらいの人が肺ガンで亡くなっていますが、肺ガンによる死亡者は凄まじい勢いで増加しています。
喫煙量の増加が関係しているのでしょう。
世界的には、ベルギー、イギリス、オランダ、旧チェコスロバキア、ハンガリー、アメリカなどに多く、これらの国では日本の約3倍の人たちが肺ガンで死亡しています。
肺ガンの症状がでたときはすでに手遅れ
肺ガンの症状としては、咳、痰、発熱、胸痛などが挙げられますが、症状が出て病院を受診しても、すでに手遅れでしょう。
肺ガンの種類もいくつかありますが、皆さんは「肺門型肺ガン」と「肺野型肺ガン」という言葉だけ覚えておいてください。
左右に2つある肺のつなぎめの部分を肺門部といいます。
空気の出入り口にあたるところなので、ヘビースモーカーには、ここによく肺ガンが発生します。
この肺門部にできた肺ガンが肺門型肺ガンです。
一方、つなぎめの外側の部分にできた肺ガンを肺野型肺ガンと呼んでいます。
肺野型肺ガンの方が早期に発見されにくく、また治療後も長生き率は低いのです。
タバコの吸いすぎは、まさに自殺行為であることがおわかりになるでしょう。
さて、肺ガンだとわかっていても、ほとんどの医師は本人に「あなたは肺ガンです」と告知しません。
しかし、「肺にカビが生えてしまったみたいですから放射線で治療しましょう」などという説明はもう古いでしょう。
医師の側では一生懸命、独自の説明方法を工夫しているものです。
どのような説明にしても、手術や放射線治療、化学療法を行うことになれば、「ああ、肺ガンなんだな」と深く悟ってください。