肝臓ガンはもともと肝臓病がなかった人にはめったに発生しません。
肝臓ガン患者10人のうち9人はウイルスやアルコールで肝臓の障害をもっていた人たちです。
もともと肝臓に異常なしと言われているなら、肝臓ガンは心配しなくて結構です。
健康な肝臓をもっている人にとって、肝臓ガンはまず無縁なガンだといえましょう。
ただし、肝臓ガンを発生しやすくする化合物がいくつか知られています。
もし、肝臓に異常がなかったのに肝臓ガンができてしまったときは、日頃利用していた怪しげな健康剤などが原因かもしれません。
肝臓ガン患者の多くがB型やC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎患者
日本にはB型やC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎患者が多いため、肝臓ガン患者は多くなりました。
ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎であるのに治療に取り組まなかった結果が肝硬変、肝臓ガンなのです。
年間3万人近い人が亡くなっています。
しかし、ここ数年その伸びは緩やかになっています。
最近は、肝炎の治療に正しく取り組む人が増えてきたことと、肝臓ガンの治療技術が進歩したことが、肝臓ガン死の増加に歯止めをかけているのでしょう。
C型肝炎ウイルスの研究が進んだおかけで、最近では、新規にウイルスに感染する人がずいぶん少なくなりました。
かつては、輸血やハリ治療、小学校での予防接種などで感染することが多かったのですが、現在ではそのようなことはまずありません。
現在、肝炎ウイルスに感染していて治療している人たちが何十年か先にお亡くなりになった後は、肝臓ガン患者も激減すると予想されます。
B型またはC型慢性肝炎で通院治療中の人は、肝臓ガンの発生には十分注意しましょう。
半年に1回のベースで超音波検査を行ってもらうことが大切です。
半年ごとに行えば、仮に肝臓ガンが芽生えていても、早い段階で見つけ出すことが可能です。
また、腫瘍マーカーの「AFP」や「PIVKAⅡ(「ピブカツー」)」というものは、肝臓ガンをチェックする上で非常に有効です。
慢性肝炎で通院中なら2ヵ月ごとにこの2つの腫瘍マーカーを採血で調べてもらうようにしてください。
肝臓の超音波検査は定期的に受けましょう
ウイルスやアルコールの肝障害で通院している人は定期的に超音波検査を受けることになります。
できれば4~6ヵ月ごとに検査してもらうのが理想的です。
外来の担当の先生が、うっかり検査のことを忘れていたら、患者の方から「そろそろ超音波検査の時期だと思うのですが……」と提案してください。
患者が担当医にすべてを任せる時代は早く終わりにしましょう。
患者と担当医が協力しあって治療を展開していく時代にしたいものです。
超音波検査を行った結果、肝臓のなかに正体不明の塊が発見されたときには、次にその塊が何であるかを調べなければなりません。
超音波検査だけでは、確定的なことはまだわからないのです。
正体不明の塊が発見されると入院した上での精密検査が必要
「入院してよく調べたほうがいいと思いますが……」と担当医に話されたときは、「いや、ちょっと仕事で忙しいのですが……」などという返事は絶対にやめてください。
「あ、そうですか。わかりました。よろしくお願いします」と答えるようにしましょう。
入院したあとは少し痛い目にあう検査を2つばかり行うことになります。
1つは足の付け根の動脈に針を刺し、管を血管にそって挿入した上でそこから造影剤を注入し、肝臓の血管配置を写しだす検査です。
この検査を血管造影といいます。
もう1つは肝臓のなかに直接針を刺し、得体のしれない塊の一部を採取してその細胞を顕微鏡で見る検査です。
これを肝生検といいます。
この2つの検査で塊の正体はほぼ確実に判明します。
それらの検査には当然、危険が伴うため、入院が必要なのです。
また、検査の前には危険性について担当医から十分説明されます。
調べた結果、肝臓ガンとわかれば、治療方法を考えることになります。
肝臓ガンが発生する人は、たいてい肝硬変の状態になっていて、肝臓の機能もかなり低下していますので、治療方法の選択には医師は慎重になります。
ガンは治療できたけれども、肝硬変がひどかったために、肝機能がさらに悪化して死亡してしまうケースもありえるからです。