ガン検査の限界、つまり、その検査により、「100パーセントの確率で病変を発見しきれるものではない」という現実を冷静に判断することも大切です。
検査をして「異常なし」と言われると、ほとんどの人が「万全だ」と思うに違いありません。
しかし、たとえ検診でガンが見つかっていても、手の施しようのない進行ガンであったばあいは、その日から人院生活か始まり、闘病生活を送るだけです。
そして退院できずに死んでいってしまうことになるでしょう。
集団検診でのガンの発見は確率論です。
検査を実施するための費用が定まっていて、その検査によるガン発見の確率が決まっている。
考えてみると、それが集団検診なのです。
個々検診ではない。
受診者の立場から考えると、検査で異常なしと言われても万全と思ってはいけない。
検査を受ける前に、もし自分かガンにかかっているなら、その検査でどれぐらいの確率でそのガンが発見されるのかを知っておかなければならないのです。
胃ガンの話
種々のガンのなかで、男女あわせてもっとも多いのが、この胃ガンです。
日本全体で、毎年約20万人の胃ガン患者が発生し、そのうちの4~5万人が死んでいきます。
胃ガンによる死亡者数は、ここ10年ほとんど変動かありません。
肺ガン、大腸ガンの死亡者数がどんどん増えているのに、胃ガンによる死亡者数が横バイであることは、バリウムを用いた集団検診の成果でしょうか?
胃ガンの発見
①「お腹がいたい」「食欲がない」などのなんらかの症状が出現し、医療機関を受診した。そして、胃の透視検査(バリウムを飲む検査)や胃カメラを行い、胃ガンが見つかった。
②人間ドックなどの胃透視検査で異常ありと指摘され、その後病院を受診し、胃カメラを行って、胃ガンが見つかった。
③人間ドックなどの便の検査で、便に血液がまじっていることが見つかり、病院で胃の検査を行ったところ胃ガンだった。
ほとんどが以上の3つのケースにあてはまるでしょう。
あなたに知ってもらいたいのは、人間ドックや成人病検診で行う胃透視検査と便潜血検査によって、どれぐらいの確率でガンが見つかっているかということです。
40歳以上の男女を1万人集めたとすると、そのなかに胃ガンをもっている人が約20人含まれています。
人間ドックなどで、この1万人に胃のバリウム検査を行うと、その20人のうち、何人の胃ガン患者を見つけだすことができるでしょうか。
検診での胃の透視検査には間接撮影と直接撮影という2種類の方法があります。
「間接撮影だと20人中8~12人を発見でき、直接撮影だと20人中15~18人を発見できる」
これが、さまざまなデータから調べた結論です。
なお、大学病院などへ症状を訴えて受診した場合、20人のほぼ全員を見つけだすことができます。
今後、検診を受診するときは以上の点だけは知っておいてください。
また、検診を受診するのに要する費用とガンの発見率をハカリにかけたうえで受診するようにしましょう。
さて、最近「採血で胃ガンがわかる」という記事を新聞や雑誌で読まれた方もいらっしやることでしょう。
採血して、血液中のある物質の濃度を測定すると、胃ガンの可能性を推定できるというものです。
この方法だと20人中何人を見つけだすことができるでしょうか。
答えは16~18人です。