動脈硬化促進因子(危険因子)としての「肥満」「耐糖能障害」は保険治療の適応でないため、医師から本気で治療しなさいとは言われません。
しかし、極端にあなたの寿命を縮める危険な因子です。
糖尿病、耐糖能障害や肥満は贅沢病といわれます。
確かに、事業を調子よく営み、金儲けの上手な人にこれらの病気は多いのです。
しかし、剛気な性格がたたり、健康を軽んじ、動脈硬化が早く進行してしまって早死ににする人が多いようです。
肥満と耐糖能障害を甘く見た開業医
開業医である54歳の男性は、大食漢でおなかが出ている肥満体であった。
40歳ごろより耐糖能障害(糖尿病のけがある)があることに気づいていたが、そのそのまま放置していた。
銀座で飲酒し、深夜1時ごろ帰宅。就寝中の午前5時ごろ、突然、叫び声を上げたため、妻が部屋に入ったところ、胸を押さえて苦しんでいた。
急いで救急車を呼んだが、救急車が到着する前に意識を失い、動かなくなった。
病院に搬送され、救急蘇生を施行されたが、回復せず、死亡宣告された。
胸を押さえて苦しむ病気にはいろいろありますが、この例のように、その後、意識を失い、動かなくなってしまえば、心筋梗塞と考えて間違いありません。
典型的な心筋梗塞患者
- まず、第1に肥満体だったということ。
心筋梗塞の一撃で命を失う人のほとんどが肥満体の人です。
- 第2は飲酒をした翌日の明け方であること。
お酒の影響で、血液の水分が血管の外に出てしまうため、この時間帯は血液が濃縮し、心筋梗塞を起こしやすいのです。
- 第3に胸を押えて苦るしんでいたこと。
胸痛のない心筋梗塞もまれにありますが、普通は経験のない強い胸痛に見舞われるものです。
- 第4に耐糖能障害があったこと。
耐糖能障害があると、心筋梗塞を起こしやすいのです。
- そして、
第5が病院に着くまでに死亡したということです。
健康管理上、「耐糖能障害」という言葉は、非常に重要です。
一般の人には、あまり馴染みがないでしょうが、この言葉はきちんと覚えてください。
「糖尿病のけがある」という意味です。
早い話が、血液中の糖分(グルコース)の濃度が普通の人より高い状態のことをいいます。
耐糖能障害の極端なものが、糖尿病というわけです。細い血管のなかをドロドロの砂糖水が流れるのですから、血管が痛みやすいのは当然です。
さて、この患者は自分か医師であったにもかかわらず、肥満、耐糖能障害の2点を重視しませんでした。
肥満や耐糖能障害の治療は保険医療の適応になっていないため、医師自身もなんとなく軽視しがちなのです。
しかし、この2つは動脈硬化を進行させる大きな原因となるのです。
この患者は、肥満、耐糖能障害を放置した結果、動脈硬化が年齢分以上に進行し、心筋梗塞へとつながっていったのです。
肥満や耐糖能障害を改善しようとせずに放置すると、かならず、この患者のように、心臓病や脳血管疾患で早死にすることになるのです。
そのようなことは医師ならわかりきっていることなのですが、「まさか、自分にかぎって」という油断がどこかにあったのでしょう。
減量さえしていれば死なずにすんだ?

いまは、食欲抑制剤という減量の秘密兵器があるのですから、痩せる気になれば簡単に痩せることができるのです。
ちょっとした油断の代償としては、あまりにも大きかったと思いませんか。
心筋梗塞は、100人発症したとすると、そのうち30人は病院にたどり着かずに死んでしまうのです。
病院にたどり着かないで死亡する人のほとんどは肥満体です。
また、たどり着いた70人のうち約15人は治療のかいなく死んでしまいます。
結局、一度心筋梗塞を発症すると半分近くの人は死んでしまうのです。
病院にたどり着かないで死亡する人のほとんどは肥満体です。
この医師が減量に取り組んでいたなら、死なずに病院にまでたどり着けたかもしれません。
それどころか、心筋梗塞そのものを起こしていなかったでしょう。
動脈硬化促進因子(危険因子)としての「肥満」「耐糖能障害」を、しっかりと覚えておいてください。