柔軟で、しかも伸展性に富んだ動脈。そんな「いい動脈」を持ち続けている人だけが長生きできるのです。
そのためには、動脈硬化を予防して血管を守ることが重要です。
では、どうすれば、動脈硬化を予防して動脈がいい状態を保ち続けることができるのかを考えてみましょう。
まず、知っておかねばならない基本事項が2つあります。
1つは、動脈硬化が年齢とともに、ある程度進行していくことはやむをえないということ。
もう1つは、一度進行した動脈硬化は元へは戻せないということです。
早い話が、「動脈硬化を年齢分以上に進行させるな!」ということが重要なのです。
動脈硬化を促進させる4本の柱
動脈硬化を進行させる原因となるものを「動脈硬化の促進因子」または「動脈硬化の危険因子」といいます。
この危険因子を除去して、自分の血管をつねにベストコンディションにおけるように努力しましょう。
動脈硬化の危険因子を右に挙げました。

そのなかでも、とくに意識しなければならないのは、体重、血圧、コレステロール、血糖の4つです。
この4つは、採血や体重計、血圧計で簡単に測定でき、しかもそれで得られた数値が有病率、死亡率と密接な関係をもっています。
動脈硬化を予防・改善に効果的な「すりゴマみそ汁」
「人は血管から老いる」という言葉がありますが、これはまさに至言です。
動脈硬化が起こったり、血栓ができたりすると血液の渋滞状態になり、全身に血液が十分に行き渡らなくなります。
そして、さまざまな栄養や酸素の供給も滞りがちになり、あらゆる臓器が老化して病気も発生しやすくなるのです。
現在、ガンと並んで心臓病と脳卒中といった血管の老化によって起こる病気が、成人の死亡原因の上位三位を占めています。
この事実からも、いかに血管の健康が大切かがおわかりになるでしょう。
そこで、血管の老化を防ぐ日常食としておすすめしたいのが今回ご紹介する「すりゴマみそ汁」です。
といっても、特別なメニューではありません。
”みそ汁にすりゴマをふりかけるだけ″のものですが、これがいかに動脈硬化の改善・予防に効果的か、簡単に説明しましょう。
まず、みそ汁のみそですが、主原料はダイズです。
ダイスには健康維持に役立つさまざまな成分が含まれています。
なかでもレシチンとサポニン、不飽和脂肪酸が動脈硬化の予防にすぐれた効果を発揮します。
レシチンは、細胞膜の材料にもなる生命の基礎物質です。脳の活性化に有効なことで知られていますが、体内での脂肪の分解にも重要な成分で、悪玉コレステロールをへらして動脈硬化の改善や予防に働きます。
サポニンのサポは、ラテン語で石けんのこと。その名のとおり、血管壁に付着している過酸化脂質を石けんのように洗い流してくれます。
また不飽和脂肪酸は、血管に付着することなく吸収される良質な脂肪分です。
次に、ゴマに含まれる有効成分について解説しましょう。
ゴマには、ビタミンEのほかにセサモールやセサミノールなどゴマ特有の抗酸化物質が豊富に含まれています。
私たちの体はビタミンEが不足してくると、血液中のコレステロールが血管内壁にへばりつき始めます。
これが進むと血管はどんどん狭く、また硬くなって動脈硬化を起こし、高血圧や脳卒中などの原因になります。
ゴマのビタミンEは、ゴマにも多く含まれている不飽和脂肪酸と協力し合って、血管にへばりついたコレステロールはもちろん、血液中の不要なコレステロールもきれいに除去してくれるのです。
また、セサモールやセサミノールなどは有害な過酸化脂質の形成を抑制することによって、血管の老化を防止します。
ゴマでもう一つ忘れてはならないのは、メチオニンの存在です。
メチオニンとは、アミノ酸のうち、食物として摂取しなければ発育・健康保持に障害をきたす必須アミノ酸の一つです。
またメチオニンの一部は、コリンという成分に変化してコレステロール量をへらす働きもします。
ここで注目していただきたいのは、ビタミンEやゴマ特有の抗酸化物質、メチオニンのような必須アミノ酸などゴマに多く含まれている動脈硬化予防物質は、ダイスにはあまり含まれていないことです。
逆に、ダイスのほうに多く含まれている有効成分は、ゴマには多く含まれていません。
つまり、健康食品の双璧であるゴマとダイスの長所が合わさって、若くて丈夫な血管を保つのによりすぐれた効果を発揮するーそれが「すりゴマみそ汁」なのです。
すりゴマみそ汁の作り方
作り方はいたって簡単。熱いみそ汁にゴマをふりかけるだけです。
実は、この手軽さが「すりゴマみそ汁」の大きな利点でもあります。
『ローマは一日にしてならず』どんな健康食品も、毎日食べ続けることによって、その効果が得られるからです。
みそ汁に振りかけるゴマは黒ゴマ、白ゴマどちらでもけっこうですが、抗酸化物質であるアントシアニンという色素成分の豊富な黒ゴマのほうがよりいいでしょう。
ただし、必ずすったものを使うようにしてください。そのほうが消化や吸収もよくなりますし、ゴマ特有の芳香を十分に味わうこともできます。
最近はすったゴマが売られていたり、便利なゴマすり器もありますが、できれば運動がわりにすり鉢とすりこぎを使った昔ながらの方法で、ゴマをすってみてはいかがでしょう。
すり方はすりこぎを軽く握り、すりこぎの重さだけでするようなイメージで、すり鉢の底から上にすりあげてくるのがコツ。
すりすぎるとゴマの大切な成分である油分がにじみでてしまうので注意してください。
みそ汁にふりかけるゴマの量は、おわん一杯につき大さじ二杯程度が適量です。
これで一日のゴマ摂取量としては十分です。
もちろん、お好きな方はそれ以上ふりかけてもかまいません。
すりゴマの食べすぎについては、心配する必要もないと思います。逆効果になるようなことは絶対にありません。