動脈硬化のメカニズム

動脈硬化の検査結果を軽視すると重大な結末を招いてしまう!

動脈硬化の検査では動脈硬化の危険因子としての「血圧」「コレステロール」は十分に注意が必要です。

例えば、ある超エリートコースの銀行員は30歳ごろより血圧とコレステロールが少し高めだと指摘されていたが、まだ若く、自覚症状もないため放置していた。

2年間の海外赴任を終え、日本に帰国してから支店長に就任。非常に多忙となり、極度に疲労していたが、支店長に就任して7日目の昼食時に、突然「うツ」と叫んで、椅子から崩れ落ちた。

同僚が助け起こしたが、まるっきり動かなくなっており、すでに呼吸不整状態になっていた。人工呼吸を続けながら救急車で大学病院に搬送された。

超エリートコースから転落し44歳で早死

このように突然倒れ、まるっきり意識がなくなったときは、まず脳の病気と考えるべきです。

一般には脳卒中といわれますが、急に意識が完全になくなり、動かなくなるのは、脳出血かくも膜下出血です。

病院に着いたとき、この患者の心臓はまだ動いていました。

しかし、呼吸がなかったため、ただちに気管内挿管(口から気管に管を入れること)され、人工呼吸器につなげられました。

そのうえで頭部CTを撮影したところ、脳内に大量の出血像が捉えられ、脳内出血と診断されました。

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脳外にも穿破しており、頭部CT上も明らかな脳ヘルニヤが確認されたため、手術を行える状態ではなかったのです。

それから7日後、13歳と10歳の2人の子供を残して、この患者は亡くなりました。

若くて自覚症状がなくても「血圧」と「コレステロール」は要注意!

さて、この患者は、若いころより血圧とコレステロールが高いと言われていました。

ということは、動脈硬化が年齢分以上に進んでいたと考えられます。

そこの支店長就任という心理的圧力と超多忙の2点が強いストレスとなり、一時的な血圧の急上昇を招いたのでしょう。

その結果、脳内のある血管が破綻し、今回のような悲劇を呼んだのです。

「動脈硬化の危険因子としての血圧」と「コレステロール」を十分頭に入れておいてください

人間ドックの総合判定の「異常なし」でも油断禁物!

これは51歳の税理士だった人の場合ですが、毎年、人間ドックを受診していたが、異常を指摘されたことはなかった。

自宅で入浴していたが、なかなか浴室から出てこないので、妻がのぞいてみると、浴室内で倒れ、左手足をハタハタさせていた。

意識はあるが、呼びかけても返事をせず、キョロキョロするだけであった。

救急車が呼ばれ、病院に搬送された。

突然会話ができなくなり、しかも麻痺をともなうとき(この人は右手足が動かなくなっていた)は、やはり脳の病気(脳卒中)であると考えてください。

脳卒中のなかでも本例は、脳梗塞にあたります。

後にCTを撮ったところ、脳の左半分の真ん中あたりの脳細胞が広範囲に破壊されていました。

まったく健康だったはずの人が、なぜこんなことに……

そこで、この人が毎年受けていた人間ドックの結果を取り寄せてみると、血圧は上が140~150、下が90~94でした。

その人間ドックでの「基準」によると、「正常」ということになるのです。

しかし、実際にはこの血圧は「危険領域」になるのです。

実際の危険領域と人間ドックや病院での判定基準には、少し「ずれ」があります。

その訳は、血圧やコレステロールなど、「保険で治療してもいいですよ」という基準と、心筋梗塞の発症と関係する実際の危険値とは、かなりの開きがあります。

こうした「ずれ」は、国民皆保険のわが国では、何らかの基準が必要だということと保険医療費の高騰を避けるためにはある程度やむをえないということなのです。

従って、健康管理は自分の責任と知識で、しっかりと学ばなければなりません。

少し学ぶ気になれば、『自分の血圧は何とかしなりればならない危険領域だ』と気づいていたはずです。