花粉症の手術は、どのような症状を対象に行われるのかと言いますと、鼻づまりがひどいのに、いろいろクスリをためしてもよくならない時や、副作用があって、いいクスリが使えない時です。
方法は単純で、腫れてつまっている鼻の粘膜をいろいろな方法で削って、鼻づまりを解消させるものです。
ただ、鼻の粘膜は再生してきますから、そのときに花粉症がよくなっていなければ、また症状が出てきます。
この再発の可能性があることと、手術した直後から2~3週間は、症状がちょっとひどくなる可能性もあります。
しかし、鼻づまりはたしかによくなりますし、入院の必要もなく、健康保険もききます。
花粉症の手術は腫れた粘膜を削って鼻づまりを解消するのが手術の目的
鼻の中は真ん中を、骨と軟骨でできている鼻中隔という壁で仕切られていて、上から上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介という3つの粘膜のひだがあります。
そこへたくさんの血液が流れこみ粘膜は、外から吸い込まれた空気を、あたためて加湿してのどのほうへ送ると同時に、空気中のほこりや細菌を、表面の線毛でとらえるというエアコンディショナーの働きをしています。
花粉症による「鼻づまり」とは、とくに下鼻甲介の粘膜が腫れ上がって、隙間がせまくなり、空気の通りがわるくなる状態として起こります。
何年ものあいだ、ひどい炎症を起こしていると、鼻の粘膜はしだいに厚く、かたくなります。
そういうところにいくら噴霧薬をふきつけても、浸透していかず、効き目もありません。
ですから、ある状況以上になると、粘膜を凝固させたり削ったりする「手術」しか、鼻づまりを治す方法がなくなってしまうのです。
花粉症の手術方法
- レーザー焼灼術(有効率90パーセント、季節中の再発率5パーセント)
- 電気凝固術(有効率80パーセント、再発はあり)
- 超音波メス凝固術
- ラジオ波凝固術
- トリクロル酢酸塗布(鼻づまりに88パーセントの有効率、14ヵ月でも有効率86パーセント)
- 下鼻甲介粘膜切除術(5年ほどあとまで、鼻づまりに72パーセントの有効率)
があります。
花粉症の手術で、主なものは炭酸ガスレーザーをつかうものですが、施設によっては、電気で凝固させたり、超音波メスをつかったり、ラジオ波メスを使ったり、ふつうのメスやハサミで粘膜を切り取ったりします。
トリクロル酢酸という薬品をぬって、粘膜に火傷をさせる方法もあります。
また、「星状神経ブロック療法」というのも、施設によっては奨められるかもしれません。
これは、頸部の付け根に、少量の局所麻酔薬を注射する副作用のない方法で、外来で10~20回続けると、症状がよくなるといわれています。
ただ、このブロック療法もそうですが、粘膜の手術は、もともとアレルギーそのものを治療する方法ではありません。
どんな方法にせよ、粘膜を凝固させる手術も、1回の手術で鼻づまりの症状が抑えられるの数か月程度です。
その点、下鼻甲介の粘膜を切ってしまう手術は、人院が必要になりますが、鼻づまりの再発がもっとも少ない方法です。
手術前に大事な確認事項
もう一つ大事なことは、鼻にほかの病気がないことを、きちんと確認しておくことです。
副鼻腔炎や鼻中隔彎曲症などがあれば、それだけで鼻は非常につまってしまいます。
しかも、花粉症の方が、こういう病気をいっしょにもっている場合は、そう珍しくありません。
こういう病気があるときは、まずそちらの治療をして、鼻づまりの状態がどう変わったかを見極めることが必要になります。
また、「鼻水」がひどいという方に、「ヴィディアン神経遮断術」という、鼻や目の働きを支配している副交感神経を切ってしまう手術が行なわれることがあります。
従来の方法では、動脈もいっしよに切ってしまって、涙が出にくくなるという障害が、かなりの率で起こりましたが、いまは内視鏡を使って、鼻にいっている後鼻神経だけを切る手術も開発されています。
これは、鼻水や涙を非常に少なくする成績が、報告されています。