花粉症の症状がひどいときは、粘膜の過敏性が非常に強くなっていて、そこに好酸球など、いろいろな炎症細胞がとりついて、強い炎症が起こっています。
そんな浸潤してきた細胞を抑えられる花粉症の薬は、ステロイドしかありません。
ただ、細菌などが入ってきたときの免疫力を抑えてしまうなどの副作用を起こさないため、のむ期間はできるだけ短くして、症状がおさまったら、すぐ別のクスリに切り替えます。
副腎皮質ホルモン、つまりステロイドには、たしかに副作用があります。
しかし、その一方で、マスコミやネット上などで、必要以上に副作用が騒がれすぎている、という感が否めません。
それは、ステロイドそのものがわるいのではなく、副作用が出るか出ないか、あるいは、どういう副作用がどの程度出るかは、ステロイドが体内に入った量の多少で、おおよそ決まるからです。
ちなみに、花粉症でステロイドを使うときの原則は、
- 鼻噴霧タイプのステロイドが第一選択。それでコントロールできないときは、内服のステロイドを使う。
- その内服期間はできるだけ短く。
の2点です。
ステロイドの副作用がこわいのは大量に内服のステロイドを使うとき
たとえば、のんだり、注射をしたときに現われるステロイドの副作用には、高血圧、高脂血症、胃潰瘍、骨粗鬆症、脂肪が沈着して顔がまん丸になるムーンフェイス、肩から首にかけて太るバッファロー肩、感染を起こしやすくなる、食欲亢進、糖尿病、白内障、緑内障、大腿骨や上腕骨の骨頭の壊死、うつなどがあります。
これが一般にいわれているステロイドの副作用です。
一方、鼻に噴霧したときの副作用は、鼻の刺激感や乾燥感、鼻中隔の粘膜が弱くなるための鼻血くらいしかありません。
なぜなら、内服や注射とくらべて、体の中に入る量がうんと少ないからです。
ステロイドの噴霧薬は、鼻をよくかんでから噴霧するのですが、くしゃみにも、鼻水にも、鼻づまりにも効果があります。
ただ、鼻水やくしゃみには2~3日で効果が出ますが、鼻づまりには1週間かかります。
ですから、すぐに効果を感じられなくても、噴霧を続けてください。
また、外出先での噴霧がむずかしいような場合は、1日4回の噴霧を、1日2回にして、クスリが半量になっても大丈夫ですし、1年間、ずっと連用しても安全です。
このステロイドの噴霧薬は、有効性と安全性が証明された、いい治療法なのです。
では、内服するタイプのステロイドはどうでしょう。
この代表がセレスタミンという、抗ヒスタミン薬とステロイドがいっしょになったクスリです。
ステロイド系の内服薬は、アレルギーの炎症を強力にストップしてくれるいいクスリですが、副作用がありますから、だらだらと長くのみつづけるのではなく、飲み始める前に、I、2週間先のやめる時期を決めておきます。
いうならば、症状を抑えるための最後の手段で、連続投与する場合は、1日2~3錠なら3~5日、1日1錠なら2週間が限度です。
また、このようなステロイド系の内服薬をのむことは、ステロイドの全身投与になりますから、スポーツ選手の場合、ドーピング検査にひっかかります。
ですから、競技前のアスリートには奨められません。