花粉症の診断は、花粉症に似た病気やアレルギーはたくさんあるし、ほかの原因で症状がつらくなっているかもしれません。
診察にはそう時間はかかりません。じっさいの流れにそってやっている診察を、お話ししましよう。
診察は問診から始まります。
1 問診
くしゃみや鼻水などの症状が、本当にアレルギー性のものなのかどうか、それを推測するいちばん大切な診察です。
いつから、どんな症状が出始めたのか、どんな症状が強いのか、ご家族にアレルギーやアトピーの方はいらっしゃるのかなど、聞き忘れることがないよう、39項目の質問からなる問診表を元に話を聞きます。
《問診で聞かれること》
- どんな症状があるか、そのなかでいちばんつらいのは何か?
- その症状はいつから始まったのか、何年前からあるか?
- どんなとき(季節、時間帯、天候など)に症状が悪化するか?
- 現在まで、どのような検査と治療を受けてきたのか。使った市販薬と、その効果
- 花粉症以外のアレルギーの病気はあるのか?
- 家族や親族にアレルギーの病気の人はいるか?
- お住まいの住所、どんな家で周りの様子は、という住宅環境、職場環境。
ペットは飼っているのかなど
2 鼻粘膜(鼻鏡)検査
鼻鏡という専用の器具で、鼻の中の粘膜をしらべる検査です。
健康な方の鼻粘膜はピンク色ですが、花粉症の方は赤かったり、通年性のハウスダスト・アレルギーの方では白っぽくなっているなど、病気ごとに特徴的な所見があります。
経験のある耳鼻科医なら、問診とこの鼻鏡検査で、アレルギーかどうか、花粉症かどうかの診断が、ほとんどできます。
同時にほかの鼻の病気(副鼻腔炎や鼻のポリープ、鼻中隔鸞曲症など)がないかも確認します。
本人に自覚がなくても、こういう病気をもっている方はけっして少なくありませんし、どれも花粉症の症状(とくに鼻づまり)を重くし、治らなくしている原因の一つなのです。
3 鼻汁好酸球検査
薬包紙という、クスリを包むのに使うサラサラした紙で鼻をかんでもらい、その鼻汁を顕微鏡でしらべます。
白血球の一種である好酸球がふえていると、アレルギー性鼻炎であることが明らかになります。
痛みもないし、すぐにすむ検査です。
好酸球はアレルギー反応が起きたところの血管から組織にしみだしてきます。
ですから、鼻汁に奸酸球が入っていれば、鼻の粘膜でアレルギー反応が起きている証拠です。
また、かゆいなど目の症状の強い方では、目の結膜の分泌物をしらべることもあり、そこに好酸球がみられたら、その結膜炎はアレルギー性ということがわかります。
4 RAST(ラスト)検査
少量とった血液を、スギやブタクサ、カモガヤなど、花粉症を起こすことがわかっているいくつかの物質と反応させ、その物質に対する「特異的lgE抗体」がふえているかどうかをしらべる血清抗体検査で、アレルギーの原因をつきとめようという検査です。
検査機関に送りますから、結果が出るまで数日かかります。
そこで、じっさいの診察では、つぎの皮内テストや誘発テストをして、ラストの結果が出る前に、「スギ花粉症」かどうかの診断をするようにしています。
なお、lgE抗体というのは、アレルギー反応が起きているとき、血液の中にふえる抗体のことです。
lgとは「免疫グロブリン」のことで、抗体ごとに濃度が違いますから、それぞれの濃度を測れば、どんなアレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすいかがわかります。
5 皮膚反応検査(皮内テスト)
皮内に、花粉症を起こすいくつかのエキスを注射し、15~20分間安静にして、どんな反応がでるかをみる検査です。
スギ花粉症の方なら、スギ花粉エキスを注射したところが数分もするとかゆくなり、15~20分後には、虫さされのように赤く腫れます。
ぷくっと腫れたところを「膨疹」といい、その膨疹の直径が10ミリ以上、まわりの赤い部分(紅斑)が20ミリ以上あると「陽性(+)というふうに、膨疹や紅斑の大きさで、何段階かにわけます。
時間もあまりかかりませんし、腫れたところは一日もしないうちに消えます。
もし残ったり、翌日になって再び赤くなる場合には、その方にとって、それは強い抗原(アレルゲン)だという証拠です。
テストするエキスの種類は人によってちがいますが、ふつうは5種類前後、時には20種類もテストすることがあります。
入浴はできますが、ひっかいたり、こすっかりしないでください。
この検査は、短時回で結果がわかるし、費用もそれほどかかりませんが、検査にクスリの影響が出ないようにするために、少なくとも検査の前一週間はアレルギーや風邪のクスリは使わないようにしなくてはなりません。
テストのあと、腫れやかゆみが残ったりして、患者さん自身はちょっと大変ですが、がまんしてください。
注射のかわりに、皮膚をひっかいたりして小さなキズをつけ、そこにエキスをたらすスクラッチテストも、原理は同しです。
6 鼻誘発検査(鼻誘発テスト)
ちょうど花粉を吸い込んだときのように、花粉エキスをしみこませた小さな布や濾紙を鼻に入れて、どんな症状が、どの程度出るかをしらべます。
鼻の三大症状(かゆみやくしゃみ、鼻水、鼻づまり)がすべてあり、とくにくしゃみをつづけて6回以上すれば、十十十の強い陽性です。
そして、この鼻誘発テストと皮内テスト、それに鼻汁好酸球検査の結果を総合して、「鼻アレルギー診療ガイドライン(通年性鼻炎と花粉症)では、その方の花粉症の病型や程度を分類することになっています。
7エックス線・CT検査
鼻づまりが強い方などの場合、副鼻腔炎やポリープ、またはそのほかの鼻の病気がないかどうか、しらべる検査です。