減感作療法は、花粉症のアレルギー反応を起こりにくくさせ、ときにはまったく起こらなくする治療です。
ただ、いくつか問題点があります。
その一つは、患者さん側にかなりの根気が必要だということです。
ふつうの方法では、効果が出るまで約1年かかります。
とくに最初のうちは、毎週2回、病院へ通わなくてはなりませんから、忙しい方などは、つい二の足を踏むことになってしまいます。
定期的に通う病院やクリニックが近所に必要だ、ということが、第二の問題でしょう。
どの病院でもいいわけではないし、やっているところを捜すことから始めなくてはならない患者さんもいます。
しかも、症状が出ていないのに病院へ行くということは、基本的にかなり面倒なことで、なかなか続かない原因の一つになっています。
三つ目は、注射にともなう「副反応」が起こる可能性が、多かれ少なかれある、ということです。
減感作療法の副作用
これには、注射したところに出る局所の反応と、全身的な反応があります。
局所の反応は、注射したところが赤くなったり、腫れたり、痒くなることで、ある程度、注射液の濃度が高くなったころに出がちです。
赤くなったり腫れたところが3センチ以内で、それが3日以内におさまるなら心配はいりません。
ただ、5センチ以上になったら要注意です。
全身の反応には、ジンマシンが出たり、鼻炎の症状が悪化したり喘息の症状がでたり、ということがあります。
もっとも重い反応はアナフィラキシーですが、経験のある専門医のところなら、ほとんど起こることはありませんし、起こっても、ほとんどベッドで寝こむことなく、病院を歩いて出られるくらい、よくなります。
こういうことができるのが専門医ですし、逆にいえば、そういうことができるスタッフがいないとおこなえない治療なのです。
舌下減感作療法は今までの欠点を改善した新しい減感作療法
痛みや副作用もなく、治療期間も短い、今までの欠点を改善した治療法です
舌下減感作療法は、口からスギ花粉エキスを入れる療法です。
欧米ではすでにイネ科の花粉症などに対して普及している方法で、WHOも1998年に治療法の一つとして推奨しています。
従来の減感作療法は、アレルゲンのエキスとグリセリンを混ぜた標準エキスを薄めたものを、注射で徐々に増量し、濃度も濃くしながら免疫力をつけていく方法です。
期間がかかる、とくに通院回数が多くなること、注射なので痛みがあること、アナフィラキシーなどアレルギー発作が起こる危険があることなどがあり、なかなか普及しませんでした。
しかし、根治療法であることは確かですから、花粉症の成り立ち、それに関わるリンパ球や、アレルギー細胞などが出す症状の原因物質のことが少しずつわかるにつれて、さまざまな方向から、従来の減感作療法を改善する方法が提案されるようになりました。
一つは、アレルゲンを体に入れるルートを変えようという方向、もう一つは入れるアレルゲンを工夫しようという方向で、舌下減感作療法は、そのうちのルート変更案の代表選手です。