減感作療法は、なぜ効かないといわれたのか、これはたしかに大問題です。
じっさい、「減感作療法」だけが、根治が望める花粉症の原因療法であることは、専門医なち誰でも認めるところなのに、20世紀の初頭に登場して以来、その後、日本では、あまり広まっているとはいえません。
そのいちばん大きな理由は、治療に時間と手間かかかるという以上に、これまでの治療成績が、けっしてほめられたものではなかったからです。
その理由も明らかです。
つまり、花粉症には、大きく分けて、減感作療法で根治できる花粉症と、根治の難しい花粉症とがあり、その区別もなく治療していたから、成績がわるかったのです。
減感作療法は、なぜ治療成績がわるかったのか
治療成績がわるかった原因を一言でいえば、花粉症という病気を、誰もがおなじような顔を持つ、単純な病気だと考えていたからです。
病原体が起こす病気は単純で、その病原体がどのようにからだに侵入して、どこを攻撃してどんな症状を起こし、どんな経過をたどるのか、個人差はあってもその違いは少なく、立てる戦略もおのずと決まってきます。
ところが、花粉症は、そんな単純な病気ではないのです。
花粉症の本体はたしかにアレルギー疾患ですが、患者さんたちを悩ましている症状は、けっしてアレルギーによるものだけではありません。
患者さんの鼻のかたちや、鼻の病気があるかないかによっても、症状が違いますし、ほかのアレルギーがあれば、また違います。
精神的なストレスなども大きく関わっています。
それだけでなく、鼻やのどの粘膜の過敏さの度合いでも症状がちがうし、神経反射の強い人と弱い人でも違うのです。
このことが、これまでまったく重要視されてきませんでした。
花粉症の症状はアレルギーと神経過敏です
神経反射の過敏性といっても、すぐにはおわかりにならないかもしれません。
ここでいう神経とは、鼻や目やのどに分布する知覚神経や自律神経のことです。
あなたはお風呂上がりに冷たい空気にあたったり、冷房が効いた部屋に入ったとき、くしゃみが出るタイプですか?
一度くしゃみが出ると、連続するタイプですか?
ラーメンを食べると、鼻水が出ませんか?
あなたは汗っかきですか?
このどれにも、実はアレルギーは関係していません。
しかし、花粉症の人には、こういうことが多く、しかもそれが症状に直接、影響しています。
その結果が、「神経の過敏性」で、「個人差」を起こす原因の一つでもあります。
減感作療法はアレルギーが原因なら8割に効果があります
花粉症の症状は、アレルギーと神経の反射、そして好酸球などの炎症細胞による粘膜の炎症でつくられたものです。
鼻がつまるのはほんとうにつらい症状ですが、鼻づまりがひどいと訴える患者さんのなかにも、アレルギー反応や炎症によって鼻がつまった人と、神経の過敏性が原因の人、さらに鼻のかたちや病気による鼻づまりの方が、いっしょになっています。
1人でいくつも合併しているひとも、多くいます。
いま花粉症の診療ガイドラインでは、花粉症を「くしゃみ・鼻水(鼻漏)型」と「鼻づまり型」にわけるようになっており、両方の症状がおなじくらいでどちらともいえない場合を「充全型」といっていますが、それだけの分類では、じっさいの患者さんの多様性をカバーしきれません。
これまで減感作療法があまり効果がないといわれていた一つの原因として、アレルギー以外の原因で症状が強い患者さんにも、おなじように治療していたことがあります。
ですから、花粉症の患者さんの状態をくわしくしらべ、神経の過敏性が主な原因という方を除いて治療していくと、ほぼ80パーセントが、治癒と症状の軽快という結果となっています。