花粉症 舌下治療は舌下減感作療法と言い、方法はきわめて簡単です。

1日I回、パンの切れ端に標準のスギ花粉エキスをしみこませ、そのまま2分ほど、口の中でふくんでいます。

2分が過ぎれば、パンを出してもいいし、そのまま飲み込んでもかまいません。docter01_l

舌下というのは口にふくむという意味で、むりに舌を持ちあげて、その裏側にいれる必要はありません。

漆職人さんたちは、以前からかぶれるのを防ぐために、弟子入りしてきた新人に、漆をうすめて飲ませていました。

こうすると、ふつうなら起こるアレルギー反応が起こらず、結果として漆にかぶれなくなるからです。

ですから、注射によるスギの減感作療法に効果があるとわかったあと、「のむ」治療法を考えた研究者は、多くいましたが、「のむ」減感作療法は、期待通りの効果が上がらなかったようです。

舌下減感作療法は「のむ」のではなく口に「ふくむ」のがポイント!

時間にして2分足らずのわずかな違いですが、効果の違いはてきめんです。

なぜなのでしょう。

風邪などをひくと、よく首のリンパ節が腫れますが、のどには左右の扁桃があり、さらに首の周りにはたくさんのリンパ節があって、そこには、細菌をつかまえるリンパ球、なかでも樹状細胞という捕食細胞がたくさんいて、細菌を効率よく捕まえて始末しています。

そのために、しばしばリンパ節が腫れますが、おなじように、入ってきたスギ花粉エキスも異物ですから、口に含んでいるうちに、粘膜からしみこんだものを、樹状細胞が細菌同様に捕食して、効果的に免疫ができていくのです。

花粉症の症状のほとんどは、首から上の、鼻や目の粘膜で起こります。

それなら、そこに近いリンパ節を利用して免疫をつけたほうが合理的です。

というわけで、スギ花粉エキスを一定時間、口の中に「ふくむ」ようにしたのです。

すると、パンからしみだしたスギ花粉エキスが、じわじわと口の中の粘膜から吸収されて、扁桃や首のまわりにたくさんあるリンパ節に入ります。

これが大事なことで、「のむ」場合は一瞬でのどを通過しますから、首のまわりのリンパ節がまったく刺激されなかったのです。

パンは口の中に含んでいてもらうための手段ですから、別にパンである必要はありません。

ちなみにスギ花粉エキスにはグリセリンが入っていて、甘く感じ、口に含むのは苦痛ではありません。

痛みもなく時間もかからず、それでいて有効率は80パーセントも

減感作療法は始める前にはしっかりと検査をしましたが、舌下減感作療法に特別な検査はありません。

必要なことは、スギ花粉症であることを証明する検査だけです。

そして、スギ花粉エキスを薄いものからだんだん濃くしていくのは、注射による減感作療法とおなじです。

それでいて、有効率はおよそ80パーセント、この数字は注射にくらべて、同じか、少し弱いくらいですから、欧米で普及したのは、きわめて当然のことでした。

注射による減感作療法と舌下減感作療法の違い

ところが、注射のほうは患者さんごとに許容の閾値をしらべ、対応を考えて、濃さや間隔を変えて行なうのに対し、舌下では、どの患者さんにも、おなじスケジュールで濃くしていくところが違います。

アナフィラキシーを起こしませんから、どの患者さんでもおなじスケジュールで大丈夫なのです。

具体的にいうと、まず2JAUという濃度のスギ花粉エキスをI滴(0.05ミリリットル)、パンにしみこませたものを口に含んでもらいます。
これを毎日1回、量をふやしながら1週間つづけたあと、次の週は20JAU、そのつぎの週が200JAU、最後の4週目は2000JAUと濃くしていって、あとは、維持量である2000JAuの濃度の20滴投与をつづけることになります。

そして、「維持量」に達したあとは、季節的なことも考えに入れながら(花粉が飛ぶ季節には、患者さんの反応が強くなるので)、口に含む回数を週に2回から週に1回、そして2週間に1回と間隔を広げていって、それをI~2年間つづけます。

この間は、なにか異常があったときはもちろん、様子をお聞きしたり、エキスの補充のために、定期的に1ヵ月に1回、診察を行います。

この方法は、維持量に達するまでの期間が短く、通院回数もずっと少ないこと、痛くないことが大きなメリットで、お子さんや高齢の方も気楽にうけていただけます。

また、特別な検査もいらないし、全ての患者さんがまったくおなじスケジュールでいいというのも、いいことです。

副作用も、人によって口にかゆみを感じる程度で、アナフィラキシーも起こりませんから、どこの医院でもできますし、将来は在宅でも可能になるでしょう。